Koji IKUTA

メゾチントを始めて41年が過ぎようとしている。

最初にメゾチントと出会ったころの感動が今も変わらず私の制作の原動力になっていると思う。

銅板に刻まれることによって生まれる黒の深さから表現される美しく繊細な明暗の諧調。

さらには技術の修練によって触覚を伴う視覚的に精緻な質感の表現を可能にする技法の潜在力。

私はこれに魅力を感じて制作を続けてきた。一方、版画の複数性も私は大事にしている。

生み出した作品が多くの人に共有してもらえる芸術なのだから私は一人よがりの作品にならないように努める。

多くの人に鑑賞してもらい、所有してもらえることこそ版画本来の役割だから。

私はこれからも誰にでも見える世界を描きつつもこの技法によってしか導きだされない精緻で美しい世界に、より多くの人が魅了される作品を全力で作っていきたいと思う。

メゾチントは職業版画家である私や私の家族の全てを支えるものだから。

 

生田宏司

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